AGAにとって自毛植毛は最後の手段と思われていることが多いです。
費用も薬での治療に比べ高額になるイメージがあり気軽に手を伸ばそうとはあまり考えられませんが、人生規模でトータル的なコストを考えると決して高額ではないとも言えます。
自毛植毛とは
自毛植毛とは、書いて字のごとく『自分の毛(自毛)を自分に植毛すること』です。
AGAによりどんなに薄毛が進行してしまっていても、後頭部の髪の毛がハゲることはありません。(AGAの性質上、後頭部は薄毛の被害を受けないため。)
したがって、ご自身の後頭部の髪の毛を必要な本数だけ毛包から採取し、希望する薄毛を治したい部分にだけ植え付ける。
このようなメカニズムが自毛植毛の特徴です!
髪の毛は、毛包ごとに数本の毛が束になって存在しています。
髪の毛数本の塊=1毛包=1グラフト
(※グラフトとは英語で『HairGraft』。『株数』や『G』で表記されることもあります。)
自毛植毛は、この『グラフト』単位で費用が決まってきます。
以下、各タイプの薄毛をまかなえるグラフト数の指標です。
M字の薄毛の場合 | 前頭部から頭頂部付近までの薄毛の場合 |
約500グラフト | 約750~1,000グラフト |
自毛植毛で植えた髪の毛の生着率は95%以上と言われており、一度、自毛植毛で植えた髪の毛はそのほとんどが半永久的に生え続けます。
(AGAの影響を受けにくい後頭部の強い髪の毛を移植するため、移植した髪の毛はその後もAGAの影響を受けないから。)
各クリニックの費用比較(植毛1,000グラフトの場合)
自毛植毛にかかる費用は、各クリニックで異なります。
およそ1000グラフト(前頭部から頭頂部までの薄毛をカバーできるグラフト数)で見た時に、それぞれのクリニックでは、どれくらいの費用になるのか見ていきましょう。
※FUE法/1000グラフトの場合で比較
クリニック名 | 費用相場 |
アイランドタワークリニック | 約140万円 |
アスク井上クリニック | 約125万円 |
ウェルネスビューティクリニック | 約115万円 |
紀尾井クリニック | 約120万円 |
湘南美容外科 | 約90万円 |
親和クリニック | 約120万円 |
ヨコ美クリニック | 約90万円 |
アイランドタワークリニックだけ若干高めですが、どのクリニックも相場90万円~120万円ほどです。
したがって、前頭部から頭頂部までの薄毛を埋めるためには、約100万円前後の費用がかかることがわかります。
クリニックの選び方については、『切らない・刈り上げない代わりに費用がかさんでもいい!』もしくは、『術後の傷あとのカバーにひと手間かかるが費用が安くなる方がいい!』などを目安にしていくことがおすすめです。
ある程度、名の知れた大手の自毛植毛クリニックであれば、詐欺などのトラブルに巻き込まれることはないよ!
どうせ手術をしてもらうなら神(ゴット)的な先生にやってもらいたいって考えもあるだろうけど、話していて相性がいい先生に手術をしてもらうのが一番後悔がない!
ちなみに自毛植毛は自由診療だから保険適用がない点には注意が必要だ!
自毛植毛はモニターで割引になる
自毛植毛に関しては多くのクリニックで常にモニターを募集しています。
患者さんのモニターはクリニックにとっても大きな宣伝効果を生み出すことになるので、その代わりに費用を安くしますといったものです。
このモニター制度を活用すれば最大で5割引きなど、費用に関して大きな恩恵を受けられます。
自毛植毛のメリットとデメリット
自毛植毛にはわかりやすいほどのメリット・デメリットがあります。具体的にどのようなものなのか、比較しながら見ていきましょう。
以下、自毛植毛におけるメリット・デメリットです。
メリット | デメリット |
拒絶反応が起こりにくい | AGAの体質自体が治るわけではない |
一度移植をした髪の毛は半永久的に生え続ける | 生着しなかった毛包は抜け落ちてしまう |
もともと髪の毛がなかった部分にも移植可能 | 合併症のリスクを伴う可能性がある |
自分の髪の毛なので仕上がりが自然 | 術式によっては傷跡が残る |
日本皮膚科学会でのランクも高評価で安心 | 費用が高額になる |
薬でのAGA治療薬は服用をやめると薄毛が再発します。
一方、自毛植毛は一度(移植して)生え始めた髪の毛に対して、その後の手入れは一切不要です。
また、植え付ける先の頭皮にまったく髪の毛がない場合でも問題なく植毛できます。
生まれつきおでこが広くて悩んでいる方でも、自毛植毛をすればおでこを狭く作り上げることができるなど、前髪やM時の薄毛も自由自在に植毛が可能です。
自毛植毛の術後
どんなに技術が発達しているといえど、手術という行為に変わりありません。
個人差はあれど、術後は毛包を採取した部分や毛包を移植した部分が一時的に炎症を起こし、つっぱり感や、かゆみ・痛みを帯びる可能性があります。
中にはむくみやめまいをもよおす人がいますが、術後、クリニックより『鎮痛剤』が処方されるので、そのような症状が出た時には迷わず服用しましょう。2~3日で収まっていきます。
また、手術をした部分がかさぶたになるまでは、傷口から雑菌が入りやすく繁殖しやすい環境になるので、医師の指示に従い、しっかりとケアをしてくことが大切です。
自毛植毛の画像
自毛植毛がどれほどのパンチ力があるのか参考に見てみましょう。
自毛植毛の症例(男性)ー1年後のビフォーアフター写真ー
(引用:毛髪科学最前線/著:板見智)
自毛植毛の経過(女性)
(出展:ルーチェクリニック公式HP)
自毛植毛の歴史
自毛植毛はどのような歴史的背景の中で生まれ、一般化していったのか見ていきましょう。
1939年:奥田庄二医師が火傷で失われた毛を再生するために研究を始める
1959年:アメリカのノーマン・オレントライヒ博士が、奥田医師の研究をもとに、男性の脱毛症を治療する手術方式として発展させ自毛植毛の分野が確立
1992年:ブラジルのドクター・ウェペルが、1000株以上植毛する方法を考案
1993年:アメリカで世界初となる国際毛髪外科学会が開かれ、自毛植毛は世界的に認知される
1995年:現在でも広く扱われている自毛植毛技術、FUT法の初期論文が発表され世界的に知られる
2001年:近年主流になりつつある自毛植毛技術、FUE法が発表され世界的に普及
2011年:手術の一部を代行する最新技術ロボットARTASがFDAから認可を受ける
自毛植毛と人工植毛の違い
植毛技術には『自毛植毛』の他に『人工植毛』という選択肢があります。それぞれが、どのような違いを持っているか見ていきましょう。
自毛植毛 | 人工植毛 | |
内容 | AGAの原因となる悪玉ホルモンの影響を受けにくい後頭部や側頭部の自身の毛髪を毛包細胞ごと採取。 採取した毛包細胞を、薄毛部分に移植することで髪の毛を生やす。 |
ナイロンやポリエステルなどの合成繊維から人工的に作った毛髪を薄毛部分に植え込むことで、髪の毛が生えているように見せる。 |
即効性 | 移植した毛包から生えている髪の毛が一度全て抜け落ちる。 ヘアサイクルの休止期が終わった段階で建康な髪の毛が生えてくるため即効性に欠ける。※髪の毛が生えるところまでを治療期間とするならば、その期間は半年から1年といったところ。 |
希望する長さや量を、その日のうちに一括で移植可能。 薄毛を隠すという意味での即効性は高い。※髪の毛が生えるところまでを治療期間とするならば、その期間は手術日の1日のみ。 |
生着率 | 移植した毛包の約95%以上が生着する。 髪の毛が何度抜けても、その度に新しい髪の毛が生えてくる。 |
人工物を頭皮に植え付けているだけなので、一度抜ければその部分には二度と髪の毛は生えてこない。 |
メンテナンス | 一度手術をすれば、その後のメンテナンスは不要。 | 年に1~2回、抜け落ちてしまった人工毛を追加するメンテナンスが必要。 |
身体への負担 | 自分自身の髪の毛を別の場所に移植するだけなので拒絶反応がない。 肉体的にも精神的にも負担が少ない。 |
人工毛を直接頭皮に植え付けるため、身体が異物と判断し拒絶反応が起き皮膚トラブルや健康被害につながる恐れがある。 |
ランニングコスト | メンテナンス不要で費用負担なし。 | 定期メンテナンス必須で費用負担あり。 |
人工植毛は即効性があり、仕上がりを完璧に自由に決めることができる。
反面、人工毛による拒絶反応では数々の副作用が報告されており、アメリカの多くの州では人工植毛自体が禁止されています。
長い目で見れば、費用の面だけにとどまらず身体的な面においても自毛植毛に軍配があがると言えるでしょう。
人工植毛は拒絶反応が大きく手術自体ができない人も存在します。
一方、自毛植毛はほとんどの人に対し手術可能です。
基本的に植毛した髪の毛以外の既存毛が影響を受けることはない。
けれども、中には20%の確率で植毛した髪の毛のまわりの既存毛が抜けてしまうこと(ショックロスという)があり、この期間中は『暗黒期』と呼ばれたりしているよ。
でもこれは、一時的なもので、ちゃんとまた生えてくるから心配無用です!
ちなみに、自毛植毛後、何十年も経過したとき、もともとの既存毛は加齢でハゲていくけど自毛植毛した髪の毛はずっと生え続けることになる。
こうなることで、まばらにハゲていくという現象(通称:離れ小島現象)が起きる危険性を秘めている点には注意が必要だ。
自毛植毛の失敗例といえば、手術自体の失敗ではなく、時が経つことでそうした不自然な事態が起こりうることを指していることが多いんだよ。
たとえば、成人式を迎えた時にはもう髪が薄くなっていたという方は、20代でその部分に植毛しても、その後進行して植毛部分周辺が薄くなってくると、かえって不自然な状態になって目立ちます。
若い時期から脱毛がハイスピードで進む方は、フィナステリドの服用と、植毛手術を併用すると効果的です。
しかし近年、各クリニックの技術が進歩し続けているおかげもあり、メガセッションという、一度で広範囲の薄毛を埋める術式が可能になっています。
自毛植毛の欠点は年々減ってきており、メリットだけがより際立つようになっています。
自毛植毛の治療法
自毛植毛と人工植毛の違いがわかったところで、ここからは『自毛植毛』にのみフォーカスを当てていきます。
自毛植毛と一言でいっても、その術式には種類があり、自毛植毛を取り扱う各クリニックはこの術式で他社との差別化をはかっているのです。
以下、主要な自毛植毛の術式です。
術式 | 特徴 | 内容 |
FUE法 | メスを使わない | 後頭部の毛包を極細のチューブパンチで採取。採取した毛包を医師がバランスや向きを考え、薄毛部分に植え付けていく。
手術時間が長くなるが、仕上がりの自由度が上がる。 |
FUT法 | 手術時間が短い | 後頭部の毛根をメスを使い帯状に採取。採取した毛根を毛包単位に株分け。株分けした毛包を薄毛部分に作ったスリットという小さな毛穴をつくり植え付けていく。
手術時間が短く、広範囲の植毛が可能。 |
ニードル法 | 傷跡が残りにくい | 後頭部から採取した毛包を株分けし専用の植毛針に毛包をセット。専用の植毛針が薄毛部分の頭皮に穴をあけるのと同時に、毛包を押し出すように植え込んでいく。 |
より自然な仕上がりにしたい場合、術式にアナログな場面が多くなるため、その分、費用が高くなる傾向があります。
どれも後頭部から毛包を採取しますが、採取した部分は他の髪の毛で覆いかぶさるため、どの術式も手術跡が丸見えになることはありません。
※採取範囲が広範囲に渡る場合はウィッグを用意してくれます。
ちなみに、残念ながら毛包を採取した後頭部の部位から髪の毛が生えてくることはありません。
技術的にはすね毛を頭に植毛することは可能だけど毛の質も違うし、すね毛は伸びてもせいぜい2~3cmほど・・。
そうしたことも踏まえ、日本国内のクリニックでやってくれる先生は皆無だよ。
次世代植毛ロボット
(出展:湘南美容クリニックHP)
自毛植毛の治療内容を大きく分けると、『毛包の採取』『採取した毛包の植え付け』の2つの流れです。
どちらも手術にあたる医師の腕に大きく左右されます。
ということで、どの手術にも医師の気分や腕に左右されない方法が叫ばれる中、2010年代に入り『毛包の採取』を請け負うロボットが誕生したのです。
その名も『ARTAS(アルタス)』。
ARTAS(アルタス)は、その高度な画像処理能力により、カメラから撮影した画像を瞬時に解析。頭皮をメスで切ることなく、パンチすることによって毛包を無傷のまま採取してくれます。
こうしたロボティクスの活躍により、より高度で平準化された『毛包の採取』が可能になったのです。
ただし、今現在このARTAS(アルタス)を導入しているクリニックは日本国内でほんの数か所にとどまっています。
自毛植毛の手術後の過ごし方
自毛植毛の手術を受けると手術跡などが残ってしまい、以降、美容院などに行き散髪することはできないのではないか?という疑問があります。
基本的に自毛植毛において移植される側の頭皮は術後2~3ヶ月すれば傷口はカサブタとしてはがれ落ち、何もわからない状態となります。
移植する側の後頭部の傷あとに関しては、注意してその傷あとを見ない限り誰の目にもわかりません。
後頭部の毛包を採取する際、まわりの髪の毛が邪魔になるので一緒に刈り上げます。
たくさん植毛する場合は、刈り上げる範囲が広範囲にわたる可能性が大きいです。
この場合、クリニックから『ウィッグ』や『ヘアシート』などが提供されるので、それらを装着し、刈り上げた部分が生えてくるまで、不自然な状態をしのぎましょう。
さらにはFUE法であればメスを使わない術式なので、最初から移植する側の後頭部に傷あとができないので、ほとんどバレないで過ごせるでしょう。
したがって自毛植毛後、傷あとがなくなる2~3ヶ月の期間がたてば、いつもと同じように美容院に通っても美容師はじめ誰にバレるということはないと言えます。
ちなみに、パーマやカラーも傷口がしっかりと治癒するまでは液体が傷口から侵入してしまうこともあるので、こちらも手術直後は避け術後2~3ヶ月以降をめどに再開することをおすすめします。
自毛植毛の手術後の洗髪は翌日から可能ですが、3~4日は控えることをおすすめします。
また、自毛植毛した髪の毛の生着期間(定着するまで)を考え、3~4日は激しい運動も控えましょう。
簡単な手術なので実感が少ないかもしれませんが、術後の腫れがひどくなる可能性もあるのでお酒も控えた方が無難です。
心配な人は、事前にクリニックの医師に相談してみよう!
自毛植毛から 3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、40日目、60日目、90日目・・・と変化の記録がありましたが、やはり全体的に、1週間が過ぎたあたりから変化を確認することができました。
その後、 2週間、3週間と変わった変化は見受けられませんでしたが、1ヶ月後からまた明らかな変化を感じました。
人間の目で感じ取ることができる変化というのは1ヶ月スパンがちょうどわかりやすいのでしょう。
ですので、もし自毛植毛体験記ブログを見るのであれば、1ヶ月目・2ヶ月目・3ヶ月目・4ヶ月目・5ヶ月目・6ヶ月目・7ヶ月目・8ヶ月・9ヶ月・10ヶ月・・・といった月ベースで見ていくことをおすすめします。
最終的に、1年後・5年後という流れで見ていけば、もし自分が自毛植毛した場合の、未来の姿をだいたい想像することができます。
手術をするかどうか迷っている方は、ぜひ一度そうしたブログを見ておきましょう。
健康診断時の自毛植毛経験申告の必要性
自毛植毛後に受ける健康診断も気になることのひとつです。
健康診断において正確な結果を得るためには、自毛植毛をした事実を事前報告しなければならないのでしょうか?
結論として、術後数ヶ月の期間が経過していれば申告は不要です。
ですが、術後まだ数日程度で健康診断を受ける場合は、血液検査により血小板の数値や白血球の数値に影響を及ぼしている可能性が出てくるので、事前に医師に報告することをおすすめします。
とはいうものの、自毛植毛をしたという事実を公の場で発言するのは少し恥ずかしいもの。
大事をとって、健康診断の2~3ヶ月前には手術を終えておきましょう。
適切な薄毛治療
自毛植毛は確かな薄毛治療効果を発揮してくれる反面、その費用も高額です。
また、個人個人のAGA進行の度合いによってもその必要性は変わってきます。
まずは自分自身に合った治療方法から始めることが大切なので、はじめから自毛植毛1本に絞らず、専門クリニックの医師に相談してから進めていくことをおすすめします。
また、実際に自毛植毛を受けている方は20代・30代・40代・50代とまちまちです。
年代は違えど個人個人それぞれで薄毛の状態は異なるので、若いからまだ自毛植毛は・・という考えは少しもったいないです。
20歳(はたち)未満でも手術を受けることは可能なので、もし自毛植毛によりQOL(人生の質)が少しでも向上するようであれば医師に相談してみることをおすすめします。
でも、未成年の場合は当然ながら保護者の同意書が必須になる!
大前提に相談先のクリニックの先生が手術のGoサインを出さなければ受けられない点には注意が必要だ!
一度手術をしてしまえばメンテナンスフリーでコストゼロ!
実は結構現実性の高い手法なんだ!