AGA(男性型脱毛症)とは?
AGAとは成人以降の男性に見られ、髪が薄くなる状態のことを指し、男性型脱毛症とも言われます。
ただし、薄毛・抜け毛の悩みがすべてAGAに当てはまるわけではありません。男性(若年層から高齢者まで)に多く見られる脱毛のタイプで、男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)が大きく関与していると言われている脱毛症状のことです。
AGAはなんの略?正式名称や読み方は?
AGAの正式名称は『Androgenetic Alopecia』であり、『アンドロジェネティックアロペシア』と読みます。略してAGA(エージーエー)という呼び方が世間一般での通り名です。
AGAの特徴
AGAはゆっくりと抜け毛が進行していき気がつくと薄毛になっているという特徴があります。
生え際が後退し、おでこが徐々に広くなっていくパターンや、頭頂部の髪の毛が薄くなっていくパターンが主流です。さらには、これら2種類のパターンが複合的に発症するパターンも見られます。
AGAになったからといって、髪の毛がまったく無くなってしまうわけではありません。どんなにAGAが進行した人でも、よく見ると細く短い産毛は残っています。
そのために必要なことが『AGA治療』になるんだ!
AGAの原因
AGAの原因は、DHT(ジヒドロテストステロン)という悪性の男性ホルモンが大きく関与しています。このDHT(ジヒドロテストステロン)が、髪の毛の生え変わる正常なサイクル(すなわち正常なヘアサイクル)を乱すことで、薄毛を進行させてしまうのです。
【正常なヘアサイクル】
①成長期・・毛が太く成長していく段階
②退行期・・毛が退化し始める段階
③休止期・・毛が抜け落ちていく段階
※①に戻る
(出展:東京スカルプクリニックHP)
しかし、悪性の男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)が生成されてしまうと、正常なヘアサイクルに乱れが生じてしまいます。
「①成長期」の期間が極端に短くなり、髪の毛が十分に太く成長する前に抜け落ちていくのです。
この現象が知らず知らずのうちに起きてしまうため、細く短い毛の割合が増えていき、気づいたときには薄毛になってしまいます。
(出展:東京スカルプクリニックHP)
結論として、この悪性の男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成さえ抑えることができれば、ヘアサイクルを正常な状態に戻すことができるので、薄毛の進行(すなわちAGAの進行)を食い止めることができのです。
治療方法と治療までの流れや期間、気になる料金について
AGAは治療で症状を改善させることができます。言いかえれば、治療以外の方法、例えば民間療法などでの改善はほぼ見込めないということです。(※AGA以外の薄毛の場合は例外)
治療方法は主に、『薬の服薬』、『薬剤の塗布』、少し変わったものでいくと『毛髪再生メソセラピー』、『HARG療法』などの『注入治療』、そして『自毛植毛』などです。
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実際に治療を始める場合、専門のクリニックを予約し、実際に診断をしてもらい、所定の薬を処方してもらうという流れが一般的です。
また、AGAの改善には個人差がありますが、一般的に治療開始から半年ほどで、効果を実感し始めるという方が多く存在しています。
※治療費(料金)はクリニックにより多少の変動があるのが特徴的です。
【治療にかかる料金の相場(1ヶ月あたり)】
診断料:無料~5,000円
治療費:約3,000円~約30,000円(※クリニックオリジナル発毛薬の場合は高くなる傾向)
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FAGA(女性男性性脱毛症)とは?
男性の薄毛進行がAGAと呼ばれるのに対し、女性の薄毛進行はFAGAと呼ばれます。言葉は似ていますが、薄毛が進行するメカニズムや薄毛の症状が異なるため、これらは明確に区別され、それぞれ治療方法が異なるてんが特徴的です。
FAGAの原因
FAGAは女性ホルモンの減少や、ホルモンバランスの乱れなどにより生じるものと考えられています。
また、女性の体内にも一定の男性ホルモンが存在しているので、加齢により女性ホルモンが減少し、相対的に男性ホルモンの量が優位になると、男性同様に薄毛が進行していくことも可能性として確認されているのです。
FAGAの症状
男性の場合のAGAでは局部的に頭皮が薄くなる症状があるのに対し、女性の場合のFAGAでは、全体的に髪の毛が細くなり薄くなっていく傾向があります。
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AGA新薬の研究は日々進んでいる
AGAは男性型脱毛症という、いわゆる進行型薄毛病状のひとつです。
現在のようにAGAの研究が進む一昔前までは、血行促進を促す食べ物や、頭皮マッサージなど根拠に基づくことのない薄毛改善方法が主流でした。
AGA治療の主な薬ではプロペシア(フィナステリド)という治療薬が最も有名ですが、AGA研究は日進月歩で進んでおり、プロペシア(フィナステリド)以外での治療方法も次々と発表されているのです。
毛髪再生医療は開発中も実用化はまだ先
再生医療と聞いてピンとくるのはIPS細胞ですが、この技術を薄毛に活かそうというのが毛髪再生医療です。
毛髪が生えている頭皮から細胞を取り出し、取り出した細胞を何十倍にも培養、この培養したものを薄毛になってきた部分へと注入。
そうすることで、薄くなっていた頭皮から健康な髪の毛が生えてくるというもの。
後頭部から健康な毛包を薄毛部分に移植する自毛植毛とは違い、なにもない部分(薄毛部分)にゼロから髪の毛を生やすことができるので、頭皮全体の毛量自体を増やすことが可能。
近年ではマウスを使った毛髪再生には成功していますが、ヒトの毛髪再生には、まだまだ高いハードルがあり、身近な治療法になるには、あと50年はかかるとも言われています。
AGA治療に対する新たな見解
現代医学でのAGAの原因は前述の通り、悪性の男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)が生成されることで、正常なヘアサイクルに乱れが生じ薄毛が進行していくというものです。
しかし、アメリカの大手製薬会社により、AGAの原因について全く異なる新たな見解が発表されました
その見解とは、PDG2という物質がAGAを誘発するというものです。
2012年、アメリカのペンシルベニア大学の研究チームが、AGAの男性にはPDG2の発現率が高いことを発見しました。
この結果を元に、マウスでの実証実験が行われ、PGD2の受容体を阻害することでマウスの毛が成長し続けるという検証結果がでたのです。
PGD2(プロスタグランジンD2)とは
PDG2とはプロスタグランジンD2を省略した呼び名で、血小板凝集作用や睡眠誘発作用を持っている物質ですが、今回の研究発表では、加えてAGAの誘発作用が認められたということです。
PGD2誘発を抑えるセチピプラントという薬
PDG2誘発を抑え、薄毛を抑制する新薬はまだ開発されていません。
今後は、このセチピプラントという薬を元に、AGA治療の新薬が開発されていくことが予想されるけど、こちらもまだまだ発見段階なので、AGA治療薬として世間に普及するにはまだまだ遠い先の話です。
AGAで悩んでいる人の割合データ(年代別)
AGAという言葉が広まり始めたのはここ数年です。しかし、歴史をひもとくと人類がいかに薄毛を気にしてきたかがわかります。
薄くなった頭皮をカバーするエピソードは古代から存在し、「医学の祖」と言われる古代ギリシャ人ヒポクラテスは、ハトの糞を用いて薄毛に悩む患者の治療に当たっていたと伝えられている文献も残っているほどです。(引用著書:専門医が教える毛髪科学最前線)
以下、『薄毛・抜け毛について気になっていることがあるか?についてのインターネットでのアンケート結果です。
【”はい”と答えた割合】
20代:52%
30代:60%
40代:46%
50代:51%
60代:55%
全世代を通して成人男性の約半数以上が、薄毛・抜け毛を気にしていることがわかります。
AGAの論文を確認したい場合
ネット文化が発達し、近年では知りたい情報が簡単にインターネット上から収集することができます。
そんな中、ネットリテラシー(ネット上の情報が正しいものであるかを判断できる能力)が高い人ほど、その情報の根拠や出どころを知りたいもの。
AGA治療についても誰かがまとめた情報だけではなく、権威性の高い論文などから情報を直接収集したいときもあるはずです。
そうした際の参考として使える、PubMedというサイトがあります。
このサイトでは、主に医学・生物学の分野の論文が閲覧可能です。重要なことが書いてある論文の本文自体は有料になることが多いですが、無料で閲覧できるものも多く存在しています。
【参考画像】
※外国のサイトなので、検索ワードは英語(例えば「プロペシア」であれば「Propecia」)で検索する必要があります。
【2017年版】男性型脱毛症診療ガイドライン
男性型脱毛症診療ガイドラインとは、日本皮膚科学会がエビデンス(科学的根拠・医学的根拠)に基づき、AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性男性型脱毛症)に効果が認められる成分、治療方法などの推奨度を判断し公表してる媒体のことです。
2010年に初めて刊行されて以来、刷新されることがありませんでしたが、2018年の2月、約7年ぶりに最新版が登場しました。
ガイドラインの目的
AGA(男性型脱毛症)の原因解明が進む中、次々と薄毛改善商品や治療薬が開発されています。
今では、皮膚科診療においても積極的にそうした治療薬が処方されているのが一般的です。しかし,世の中には無効といえる、科学的根拠に基づかない民間療法が社会的に横行しています。
そうした問題を是正するため、科学的根拠に基づいた情報を選び出し、医師・患者双方にとって標準的治療法を提示し、AGA((男性型脱毛症)やAGA(女性男性型脱毛症)の診療水準を向上するというのが、このガイドラインの目的です。
男性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)に基づいた治療と、その推奨レベル
ガイドラインは、医学会で発表された論文、そして研究や臨床試験から得られたエビデンス(科学的・医学的根拠)を参考に作成されています。
また、アンダーグラウンドな治療法や治療薬であっても、そこにエビデンス(科学的・医学的根拠)がある場合は取り上げ、推奨度をランク付けし可視化しているのです。
ガイドラインでは、以下の分類で推奨度が示されています。
推奨度 | 推奨度 分類 |
A | 行うよう強く勧める |
B | 行うよう勧める |
C1 | 行ってもよい |
C2 | 行わないほうがよい |
D | 行うべきではない |
この推奨度に沿って、ガイドライン2017年版では、以下のような結果が示されています。
治療内容 | 性別 | 推奨度 | 推奨度 分類 |
フィナステリド内服薬 | 男性 | A | 行うよう強く勧める |
女性 | D | 行うべきではない | |
デュタステリド内服薬 | 男性 | A | 行うよう強く勧める |
女性 | D | 行うべきではない | |
ミノキシジル外用薬 | 男性 | A | 行うよう強く勧める |
女性 | A | 行うよう強く勧める | |
自毛植毛 | 男性 | B | 行うよう勧める |
女性 | C1 | 行ってもよい | |
人工植毛 | 男性 | D | 行うべきではない |
女性 | D | 行うべきではない | |
LED及び低出力レーザー照射 | 男性 | B | 行うよう勧める |
女性 | B | 行うよう勧める | |
アデノシン外用薬 | 男性 | B | 行うよう勧める |
女性 | C1 | 行ってもよい | |
塩化プルトニウム外用薬 | 男性 | C1 | 行ってもよい |
女性 | C1 | 行ってもよい | |
t-フランバン外用薬 | 男性 | C1 | 行ってもよい |
女性 | C1 | 行ってもよい | |
サイトプリン・ペンタデカン外用薬 | 男性 | C1 | 行ってもよい |
女性 | C1 | 行ってもよい | |
ケトコナゾール外用薬 | 男性 | C1 | 行ってもよい |
女性 | C1 | 行ってもよい | |
かつらの着用 | 男性 | C1 | 行ってもよい |
女性 | C1 | 行ってもよい | |
ビマトプロスト及びラタノプロスト外用薬 | 男性 | C2 | 行わないほうがよい |
女性 | C2 | 行わないほうがよい | |
成長因子導入及び細胞移植療法 | 男性 | C2 | 行わないほうがよい |
女性 | C2 | 行わないほうがよい | |
ミノキシジル内服薬 | 男性 | D | 行うべきではない |
女性 | D | 行うべきではない |
AGA(男性型脱毛症)には、フィナステリド内服薬・デュタステリド内服薬・ミノキシジル外用薬がもっとも推奨されています。
FAGA(女性型脱毛症)では、ミノキシジル外用薬のみ、もっとも推奨されるという結果となっています。
2017年版と2010年版の主な違い
今回最新版として発表された『2017年度版』と、前回の『2010年度版』では、内容にどういった違いがあるのかも気になるところです。以下、具体的に変更があった点の要約となります。
【変更点の要約】
- 推奨度の示し方として、治療効果よりも臨床・治験データによる安全性が評価基準となった
- 2010年版から2017年版にかけて、推奨度が格上げされたのは、アデノシンのみ
- 以下項目の追加及び削除が行われた
・デュタステリドの追加
・LED及び低出力レーザー照射の追加
・かつらの追加
・成長因子導入及び細胞移植療法の追加
・ミノキシジル内服薬の追加
・ビマトプロスト及びラタノプロスト外用薬の追加
・セファランチンの削除
ガイドライン上のデータの根拠としては、実証・実績がポイントとなってくるので、ここ数年で世の中に出てきたものは、おしなべて評価が低くなっていることがわかります。
したがって、いま現在、最強のAGA治療薬と言われているミノキシジル内服薬については、最低評価のD(行うべきではない)というランク付けです。
2017年版ガイドラインで最も推奨されている治療法
基本的に、『安全性がしっかりと担保されたうえで、治療効果も確実に見受けられる』といったものがA評価(行うよう強く勧める)に選ばれています。
【男性向けのA評価】
・フィナステリド内服薬
・デュタステリド内服薬
・ミノキシジル外用薬
【女性向けのA評価】
・ミノキシジル外用薬
男性と女性の評価結果を比べると、女性向けのA評価はミノキシジル外用薬の一つしかありません。
これはフィナステリドやデュタステリドに含まれている成分に、女性にとっては禁忌な成分が入っているためです。
具体的には、妊娠中や授乳中の女性がフィナステリドを摂取した場合、胎児や乳児が男児であると、生殖器の発育に異常をきたす恐れがあるといわれています。
こうした男女の違いを背景に、女性には女性の薄毛治療をする必要性があるのです。
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まとめ
- AGAは徐々に薄毛が進行していく脱毛症状のこと
- AGAの原因は男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)が正常なヘアサイクルを乱すこと
- ガイドラインで推奨されているAGA治療薬は「フィナステリド」「デュタステリド」「ミノキシジル」
- AGA治療で薄毛を改善することはQOL(人生の質)を向上させることにつながる!